『意思決定の心理学 脳とこころの傾向と対策』阿部修士
こんにちは。あごきれウサギのみもらです。
今日は、心理学と脳科学の最新の研究成果を元に意思決定のメカニズムについて、私のような素人にも分かりやすく解説してくれている本を読んだので紹介します。
「速いこころ」と「遅いこころ」の二重過程理論
本書は、
「速いこころ」
「遅いこころ」
の二つがバランスを取りながら意思決定を導いているということを様々な例や実験結果を元に説明しています。
「速いこころ」とは
情緒反応や直感的思考、欲求などの、脳の皮質下と呼ばれる比較的原始的な部分の働きによるもの。
「遅いこころ」とは
合理的判断、論理的思考、自制心といった、脳の前頭前野と呼ばれる後天的に変わる領域の働きたいによるもの。
人間はこの対立する二つの仕組みによって、状況に応じた最適な判断をすることができるようになっているのです。
しかし、これらの二つのバランスが崩れたり、脳のどこかの機能が極端に強くなったりすることで、様々な問題が生まれることがあります。
本書では、ギャンブル依存症、失恋の痛手の引きずり、嘘をつく、ズルをする、他人の不幸の捉え方、などを「速いこころ」と「遅いこころ」のそれぞれの働きを脳科学的に解説していて、「へぇー、脳はそんな動きをしていたのか!」というような新しい視点をもらえます。
人間の本性とは
「速いこころ」は悪なのか。「人間の本性とは」という疑問についても、道徳的判断を支える脳の仕組みとして解説しています。
結論からいうと、悪ではありません。
例えば、「寄付をする」、「他人と協力をする」という行為は、「速いこころ」が作用しているのだとか。そしてこの「速いこころ」が私たちの意思決定には重要な役割を果たしているのです。
自制心で行動は制御できるのか
そこで生まれる疑問は「遅いこころ」すなわち自制心では行動は制御できないのかという疑問です。
本書では、俯瞰的に脳を使うことで、「遅いこころ」は「速いこころ」を制御できる。と述べています。
この「俯瞰的に脳を使う」というところがミソな気がしました。俯瞰的という言葉、以前に読んだ本にあったマインドフルネス思考法にも通じるものがあるのではないでしょうか。
脳科学の分野はここ数十年で飛躍的に進化していると言いますが、まだ言い切れないことも多いようです。
これからますます、脳科学の新しい研究成果が出て、心理学的な考察が脳科学的にも説明できるようになって、このような良書が生まれていくことを願っています。
意思決定の心理学 脳とこころの傾向と対策 (講談社選書メチエ)
- 作者: 阿部修士
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2017/01/12
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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