『嫌われる勇気』岸見一郎 古賀史健
こんにちは。あごきれウサギのみもらです。
2013年発行のベストセラー本、同名のドラマも作られて世の中に知れ渡りましたね。遅ればせながら読みました。アドラー心理学の内容が哲人と青年の対話を通して解説されています。正直言って1回読んだだけで、この本が真に伝えたいことが理解できたとは思えない、それだけ重量感のある本でした。
人は変わることができるのか。
「人は変わることができるのか。」というテーマについて、アドラー心理学に精通した哲人と人生に悩みを抱えた「変わりたい」と願う青年が全くの反対意見を交わし合うところから始まりとても読み応えがあります。
哲人は、現在の自分は過去の出来事によって規定されるのだという考えを
われわれは原因の住人で有る限り一歩も前に進めない
と、完全否定しています。
そして、変えられないのではなく
自らに対して変わらないという決心を下している
のだと断言します。自分を好きになれないのも「自分を好きにならないでおこうと決心している」からだと。
なぜ、そのような決心をする必要があるのか。それは
他者との関係の中で傷つかないため
こんな自分は誰にも好きになってもらえないだろうと思い、他者と距離を置くことで対人関係の中で傷つくことを避けている
のだと言います。
すべての悩みは「対人関係の悩み」である
本書では、すべての悩みは「対人関係」によるものだと断言しているところが興味深いです。
確かに言われてみると、社会人になって初めて悩んだ事は対人関係のストレスでした。大学生までは、苦手な人物がいても関わらないという選択ができたのですが、社会人になると仕事の上司だったりどうしても関わらざるをえない関係が生まれる。思い起こすと、当時(10年前)私は上司からのパワーハラスメントとも取られるような言動にとても悩んでいました。そして、上司のことが心の底から嫌いでした。
人生のタスク
「人生のタスク」から逃げているから、他者と競争し、他者を敵とみなすことに繋がっている。
人生のタスクというテーマが登場します。私が入社した頃、アドラー心理学を学んでいればもう少し気持ち的にはゆとりができて、余計な言葉は耳に入らなかったかもしれません。
アドラー心理学では、人生のタスクが3つあります。
1.仕事のタスク:仕事上の対人関係の形成と維持
2.交友のタスク:友人関係の形成と維持
3.愛のタスク:恋愛関係と親子関係の形成と維持
そして、行動面と心理面で目標を掲げています。
自立すること
社会と調和して暮らせること
それをこの行動を支える心理面の目標は、
私には能力がある、という意識
人々はわたしの仲間である、という意識
です。
幸福とは何か
本書における幸福感とは「わたしは誰かの役に立っているという主観的な感覚」すなわち「貢献感」をさします。
わたしの周りでも、仕事のやりがいについて話すとき口を揃えて皆
「お客様に感謝された時がいちばん嬉しい。」
と言いますが、これはコモンセンスなのでしょうか。
自由とは何か
「自由とは他者から嫌われる事である」
ここで、出てきました。タイトルにもなっている「嫌われる」という言葉。
他者の評価を気にかけず、他者から嫌われることを怖れず、承認されないかもしれないというコストを支払わないかぎり、自分の生き方を貫く事はできない。つまり、自由になれない。
幼少期から他人の目を気にしながら生きてきた身としては、真の意味で「自由である」という状態になる事は容易ではなさそうに感じます。
生きる意味とは何か
アドラーは「一般的な人生の意味はない」と言っています。
本書では、人生において大きな目標を掲げる必要はないと述べています。その理由として、
人生とは連続する刹那なのです。われわれは「いま、ここ」しか生きることができない。われわれの生とは刹那の中にしか存在しないのです。
したがって、
計画的な人生など、それが必要か不必要かという以前に、不可能なのです。
そして、哲人と青年の会話がクライマックスを迎えます。それまで、反論を繰り返してきた青年が翻る瞬間の会話です。
哲人:人生における最大の嘘とは「いま、ここ」を生きないことです。過去を見て、未来を見て、人生全体に薄ぼんやりとした光を当てて、何か見えたつもりになることです。あなたはこれまで、「いま、ここ」に目を背け、ありもしない過去と未来ばかりに光を当ててこられた。自分の人生に、かけがえのない刹那に嘘をついてこられた。
青年:・・・・ああ!
かなり読み応えのある深い本でした。また人生のどこかの折に読み返したい本です。
今週のお題「読書の秋」