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『人生の100のリスト』ロバート・ハリス

こんにちは。あごきれウサギのみもらです。秋も深まる季節となりました。

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京都嵯峨野 晩秋の祇王寺 © T-KIMURA クリエイティブ・コモンズ・ライセンス(表示4.0 国際)

 

ミドルエイジにして人生に迷い様々なジャンルの本を読んでいます。そんな自分がタイトルから惹かれ、知人が紹介していて気になった本を読んでみました。

 

わたしの父親世代(1948年生まれ)のロバート・ハリスさんの人生の懐古録のような内容になっています。海外ではヒッピーが流行していた当時の青春を垣間見させてもらったような気分にもなりました。一方で苦しかったことも全てをつつみ隠さず赤裸々に語っていて、著者は心の底から苦しんでいたので苦しかったことを書くことはとても勇気がいることだったのではないかなということが伝わってきました。

ちなみにハリスさんは名前は外国人ですが、見た目は完全に日本人です。(日本名は、ヒラヤナギ・ススム だそうです。)

 

アメリカ、中東、インド、オーストラリア、東南アジア、ヨーロッパなど様々な国を旅をしながら生きる楽しさや苦悩を少しだけ覗かせてもらい、これらのストーリーを映画にしたら5本分くらいになるのではと思ってしまうような濃厚な内容になっています。

 

著者は、高校卒業した後世界中を放浪する旅に出ます。そして19歳になった頃、日本に帰りたくないという思いから、「人生の100のリスト」を作ります。

今の僕に必要なのはそんな具体的なシナリオだと思った。やりたくない事はわかっていたが、やりたい事はあまりにもたくさんあって、方向性というものが全く見えなかった。ならば、それらを一つ一つ書いていって、全てを目標にすればいい。現状を変える事はできないかもしれないが、自分というものが少しは見えてくるかもしれない。

 

著者は、正直なところぶっ飛んでいて最近の安定志向が根強い若者達の価値観とは真逆のような生き方をしています。仕事もお金も無くてもなんとかなるだろう、という考えのもと、実際にギャンブルだけで妻と2人で1年間生活された経験もあるそう。(著者の書いた人生のリストの一つにも「ギャンブルでメシを食う」というものがあります。)

 

本当の自由とは何か

わたし自身がもっとも興味深かったのは、誰から見ても自由な生き方をしているように見える著者ですが、22歳で結婚して、大学を卒業し東南アジアを彷徨い、バリ島で1年間過ごした後に、毎日毎日自己嫌悪と不安に苛まれるようになり、その後5年間も原因不明のノイローゼ状態になってしまったことです。

 

オーストラリアのシドニーで出会ったプライマル・セラピーによって、ノイローゼの原因がわかるまでの様子が「セラピーを受ける」の章にとても臨場感あふれる表現で記されています。著者は、自由な生き方をしていると見えて、実は父親との確執の中で不自由になっていたのです。

 

著者が高校を卒業後、放浪の旅を始めたこと、日本に留まることを避けていること、その行動の元になっていたのは「父親との確執」にあったのだという事がわかり、なんだか府に落ちた思いがして、急にロバート・ハリスさん自身を身近な存在に感じました。そして、著者自身も恐らく、自分の心に父への怒りのような感情があるということに気付いていなかった。もしかすると心の何処かでは気付いていたのかもしれないが、向き合っていなかったのかもしれません。

 

トラウマは悪なのか

とはいえ、放浪人としての生き方は、著者のパーソナリティとなって、その後の「自伝を書く」や「ラジオの番組をもつ」といった仕事にも十分に活かされていて、過去のトラウマが悪い結果を生んだとはとても思えません。そして何よりはたから見た著者の人生は、破天荒ではありますがキラキラと輝いていて毎日がとても楽しそうなのです。今ここを生きていてそこで出会った人を大切にしている著者の人柄があってからこそのことだろうと思いました。

 

そして、19歳の時に初めて書いた100のリストを再び書き直したこれからの人生の100のリストについてもまたどこかでお目にかかれると良いなと思いました。

 

人生の100のリスト

人生の100のリスト

 

 

今週のお題「読書の秋」