いまから。ここから。

気になること。日々の備忘録。あと、読書。

『日本人のための憲法原論』小室直樹

この本はAmazonレビューでもかなり高評価だったのですが、読んでみて納得しました。

 

わかりやすい!憲法

この本はまさに、わかりやすい!憲法学と言えるでしょう。

現在の日本と日本国憲法が、様々な問題を抱えている現状について、西洋史まで遡って論じます。

 

そして、国際関係、政治、経済、宗教など様々な切り口からどのような社会的な選択、変遷を経て日本国憲法が出来上がったのかを全492頁で熱く伝えています。 西洋史日本国憲法がつながっているという事実がわかる、まさに「目から鱗」になる本です。

 

正直、世界史の授業を受けるよりもこの本を読む事の方が十分意義があるように思います。

 

資本主義ってなに?

民主主義的政治ってなに?

日本は民主主義国なの?

 

といった疑問に答えを与えてくれます。

 

確かに、1人の学者の意見という見方もあるでしょうが、それよりもこれほどまでに多角的な視野でダイナミックに物事が起きた背景を論じることができる学者は日本にどれだけいるのでしょうか。

 

私のような素人にも読みやすいように、著者と編集者の掛け合いが合間合間にあって、著者が「伝えたい!」と思っていることがひしひしと伝わってきます。 それと同時に自分の無知にも気づくことができました。

 

この本が書かれたのは、10年以上前ですが、当時の日本が置かれた姿に危機感を抱いていた著者が晩年に残した遺作といっても良い本ではないでしょうか。

 

小中高で学んできた事を再び大人になって学び直すという事の必要性をこの本に出会ってから深く認識しました。

 

憲法とは誰が為のものか?

私がこの本の冒頭でまず目から鱗だったのは次の点

 

  • 刑法は、裁判官のために書かれたもの
  • 民法は、国民全体のために書かれたもの
  • 刑事訴訟法は、行政権力に対する命令
  • 刑事裁判は、検察官を裁くもの

 

この解釈は憲法学者の中でも賛否はあると思われるますが、著者は法律は国家権力という強大な力を抑制するために必要なものと認識しています。

 

自分自身は、法律は国民の行動規範のようなもののイメージが強かった。また裁判も被告人を裁くものと思っていた。

 

しかし、本質的にはそうではなく、強い権力を持った検察、行政を裁く為のものとして存在しているという事実。

 

そして、 憲法は、司法、立法、行政の権力に対する命令 つまり、憲法もまた、国民のためではなく、司法、立法、行政を取り締まる為のものである。

 

そして、今の日本が陥っている現状はこの「憲法が死んでいる」ということに起因しているという。

 

強い権力は乱用される。

 

これは過去の歴史を遡ると必ずそうなると言えることがこの本からわかります。

 

その為、権力を抑える力が必要で、その役割を宗教と憲法が担っているのだとか。

 

今の日本は「憲法が死んでいる」

しかしながら、今の日本はこの憲法が正しく機能していない。

 

日本国憲法GHQが作成した憲法原案がほぼそのままの形で残っています。

それは、元をたどるとアメリカの憲法の元となったロックの「社会契約論」の精神が息づいていると言うことです。

 

社会契約論とは国民は納税する代わりに国と契約を結ぶというもの。

 

その契約の内容が憲法であり、国が定める公約もの契約の一つなのです。

 

しかしながら、日本では、政党が掲げる公約は守られないことが多く絵に描いた餅のような存在になっている。

 

ここまで、憲法が死んだ存在になってしまったのは、日本には憲法はあるがそれを支える精神がないということが原因ではないかと推測しています。

 

「民主主義を目指しての日々の努力の中に、はじめて民主主義は見いだされる。」

 

今再び起きている改憲論議を聞いて、著者がどのような発言をするのか、聞いてみたかったです。

 

 

日本人のための憲法原論

日本人のための憲法原論

 

 

『運命を拓く』中村天風

こんにちは。あごきれウサギのみもらです。

 

今日は少し古い本を読みました。あのパナソニックの創業者である松下幸之助さんや京セラの創業者である稲盛和夫さんなどのビッグな方々が教えを学んだ、日本の重鎮のなかの重鎮たる人物の書です。

 

私自身、30代ですが、この年齢でこの書に出会えたのは本当に運が良かったと思います。

 

中村天風という人物について

明治9年に現在の東京都北区に生まれた天風(本名:三郎)は、明治36年日露戦争の諜報員として満州の地で生死を分ける経験をして帰国後、30歳にして奔馬(ほんば)性(結核の症例の中でも急速に症状が進むもの)肺結核を発症しどんな治療を受けても快方に向かわなかった。苦しみの中で読んだ本に感銘を受け、作家であるオリソン・スウェット・マーデンを訪ねて渡米するも、あまり相手にされなかった。その後、様々な人物と出会い、コロンビア大学に入学し、自律神経系の医学を学んだとされる。その後もフランスなどを渡り歩き、偶然降り立ったインドで出会ったヨーガの聖人であるカリアッパ師との運命的な出会いを経て、ヒマラヤ山麓で2年半の修行の後、病が完治するのである。帰国後は自ら悟った心身統一法を説く活動を始める。

中村天風 - Wikipedia

 

本書で伝えている教え

本書は、中村天風という人物が、重い病に苦しんで苦しみ抜いてようやく快方に向かった時に悟った真理というものを、明文化して伝えている。それは、決して宗教的な何かでも、医学的な何かでもなく、現在ある命を有意義に使うための基礎的な考えを正確につくりあげるための教えである。

 

この世は本質的に楽しい、嬉しい、そして調和した美しい世界

人間の心というものの偉大さを説いている。

人間の心というのは、一方においては、人間の運命や健康その他人生の一切をよりよく建設する力があると同時に、またこれと反対に人生をより悪く破壊する力もある

 

「人間の健康も、運命も、心一つの置きどころ」

 

「心が人生を創る」

 

命の力を豊富に受け入れられる活き方とは、いかなる場合にもその心の態度を積極的に保つことであって、どんな場合にも最高度に引き上げられた自己認証をゆるがせにしないことである。

 

本書を通して積極的な心が人生を切り開いていくのだと教えてくれている。

恐れ、怒り、悲しみ、妬みのような心で消極的に世界をみるのではなく、悲しいことがあっても「自分は生きているではないか。」というように積極的な捉え方をする。

「蒔いた種のとおり花は咲く」

 

本書では、章の終わりにまとめとして誦句(しょうく)がいくつか載っている。その中で、自分が気に入ったものを2つほど載せておきます。

 

蘇えりの誦句

われは今、力と勇気と信念とをもって蘇り、 新しい元気をもって、正しい人間としての 本領の発揮と、その本分の実践に向かおうとするのである。

われはまた、わが日々の仕事に、 溢れる熱誠をもって赴く。

われはまた、悦びと感謝に満たされて 進み行かん。

一切の希望 一切の目的は、厳粛に正しいものをもって標準として定めよう。

そして、常に明るく朗らかに統一道を実践し、ひたむきに、人の世のために役立つ自己を完成することに、努力しよう。

 

一念不動の誦句

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運命を拓く (講談社文庫)

運命を拓く (講談社文庫)

 

 

『意思決定の心理学 脳とこころの傾向と対策』阿部修士

こんにちは。あごきれウサギのみもらです。

 

今日は、心理学と脳科学の最新の研究成果を元に意思決定のメカニズムについて、私のような素人にも分かりやすく解説してくれている本を読んだので紹介します。

 

「速いこころ」と「遅いこころ」の二重過程理論

本書は、

「速いこころ」

「遅いこころ」

の二つがバランスを取りながら意思決定を導いているということを様々な例や実験結果を元に説明しています。

 

「速いこころ」とは

情緒反応や直感的思考、欲求などの、脳の皮質下と呼ばれる比較的原始的な部分の働きによるもの。

 

「遅いこころ」とは

合理的判断、論理的思考、自制心といった、脳の前頭前野と呼ばれる後天的に変わる領域の働きたいによるもの。

 

人間はこの対立する二つの仕組みによって、状況に応じた最適な判断をすることができるようになっているのです。

 

しかし、これらの二つのバランスが崩れたり、脳のどこかの機能が極端に強くなったりすることで、様々な問題が生まれることがあります。

本書では、ギャンブル依存症、失恋の痛手の引きずり、嘘をつく、ズルをする、他人の不幸の捉え方、などを「速いこころ」と「遅いこころ」のそれぞれの働きを脳科学的に解説していて、「へぇー、脳はそんな動きをしていたのか!」というような新しい視点をもらえます。

 

人間の本性とは

「速いこころ」は悪なのか。「人間の本性とは」という疑問についても、道徳的判断を支える脳の仕組みとして解説しています。

 

結論からいうと、悪ではありません。

例えば、「寄付をする」、「他人と協力をする」という行為は、「速いこころ」が作用しているのだとか。そしてこの「速いこころ」が私たちの意思決定には重要な役割を果たしているのです。

 

自制心で行動は制御できるのか

そこで生まれる疑問は「遅いこころ」すなわち自制心では行動は制御できないのかという疑問です。

 

本書では、俯瞰的に脳を使うことで、「遅いこころ」は「速いこころ」を制御できる。と述べています。

 

この「俯瞰的に脳を使う」というところがミソな気がしました。俯瞰的という言葉、以前に読んだ本にあったマインドフルネス思考法にも通じるものがあるのではないでしょうか。

 

脳科学の分野はここ数十年で飛躍的に進化していると言いますが、まだ言い切れないことも多いようです。

これからますます、脳科学の新しい研究成果が出て、心理学的な考察が脳科学的にも説明できるようになって、このような良書が生まれていくことを願っています。

 

意思決定の心理学 脳とこころの傾向と対策 (講談社選書メチエ)

意思決定の心理学 脳とこころの傾向と対策 (講談社選書メチエ)

 

 

『史上最強の哲学入門 東洋の哲人たち』飲茶

こんにちは。あごきれウサギのみもらです。

今年の紅葉が見られるのも残りあと少しですね。

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さて、読書の秋。

インドで生まれた釈迦の仏教哲学が中国に渡り中国風のアレンジを経て日本に伝わり普及するまでに登場した様々な哲人たちやその思想が漫画を読むような感覚(実際には文章ばかりですが)で読めて、とても分かりやすく読みやすいです。

 

高校の時、倫理の授業で学んだブラフマン(世界)、アートマン(真我)、梵我一如、無為自然などという難しい考え方が分かりやすく解説されています。また、釈迦、龍樹、中国の歴代皇帝、孔子孟子老子荀子荘子などの思想家達が個性豊かに登場します。神のような存在だと思っていた偉人たちが、この本を通して親しみ深く感じられ、あらためて敬意を感じました。高校生の時にこの本を読んでいれば、もっと授業が楽しく受けられたのではと思いながら読みました。

 

思想は東へ東へ

思想は東へ東へと伝播し、最果ての東である日本に辿り着きました。そして、さらに日本風にアレンジが加えられ、念仏を唱えれば極楽浄土に行けるというような、より日常に浸透しやすい形に変わりました。

 

根源の思想 

思想は、形は変われども根本的には、紀元前700年頃にヤージュナヴァルキャが悟った、「ブラフマン(世界)はアートマン(真我)にほかならない」、「〜に非ず、〜に非ず」という考えに通じているということが非常に興味深かったです。

 

ブラフマン(世界)はアートマン(真我)にほかならない」

とは、つまり、自分自身が世界であるということ。物(人)とは境界を作って名前をつけたものであって実際にはそのようなものは存在しない。境界を取ってしまえば世界と物とは一つになる。つまり自分と世界も一つである。

 

「〜に非ず、〜に非ず」

とは、つまり、自分自身を認識するということはできない。認識するものと認識されるものが同一であることはない。そのため、自分自身は〜ではない。という表現でしか現すことはできない、ということである。

もっともなことであるが、自分はりんごではない。自分はへびではない。ということはできるが自分は何であるかということは誰も言えない訳である。

 

東洋哲学は、哲人がある時に悟ったことを弟子に伝える形で広まって行きました。その思想を本当の意味で知るためには、本を読んでわかるということではなく、本来は自分自身も悟る体験をする必要があります。ただ、うすらぼんやりですが、日常の中でも世界と自分が繋がっているというような体験をすることはあるように思います。それは悟ったというには仰々しいレベルだとは思いますが。。

 

これだけの天才的な思想家が登場してもなお世界は混沌としていて問題や矛盾をたくさん抱えています。思想は迫害や制圧を受け変化しながら東へ東へと伝播し、日本に伝わりました。日本は東洋の思想だけではなく、様々な思想が集まった国です。

 

最果ての東、日本で哲学を考える

ブラフマンアートマンである(世界と自分は一つである)という思想はもしかすると日本人の根幹にはとても根付いているのではないかと感じます。その理由の一つとして、日本国憲法があります。

 

日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであつて、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。

日本国憲法前文より

 

この前文が実現した世の中がもしかすると東洋の哲人たちが伝えようとした本来の国のある形なのではないか、と感じました。この本は高校の歴史や倫理の授業で学んだことを再認識する上で非常に良書でした。勉強中の高校生はもちろん、しばらく歴史の勉強から離れた大人にもオススメです。

 

 

『人生の100のリスト』ロバート・ハリス

こんにちは。あごきれウサギのみもらです。秋も深まる季節となりました。

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京都嵯峨野 晩秋の祇王寺 © T-KIMURA クリエイティブ・コモンズ・ライセンス(表示4.0 国際)

 

ミドルエイジにして人生に迷い様々なジャンルの本を読んでいます。そんな自分がタイトルから惹かれ、知人が紹介していて気になった本を読んでみました。

 

わたしの父親世代(1948年生まれ)のロバート・ハリスさんの人生の懐古録のような内容になっています。海外ではヒッピーが流行していた当時の青春を垣間見させてもらったような気分にもなりました。一方で苦しかったことも全てをつつみ隠さず赤裸々に語っていて、著者は心の底から苦しんでいたので苦しかったことを書くことはとても勇気がいることだったのではないかなということが伝わってきました。

ちなみにハリスさんは名前は外国人ですが、見た目は完全に日本人です。(日本名は、ヒラヤナギ・ススム だそうです。)

 

アメリカ、中東、インド、オーストラリア、東南アジア、ヨーロッパなど様々な国を旅をしながら生きる楽しさや苦悩を少しだけ覗かせてもらい、これらのストーリーを映画にしたら5本分くらいになるのではと思ってしまうような濃厚な内容になっています。

 

著者は、高校卒業した後世界中を放浪する旅に出ます。そして19歳になった頃、日本に帰りたくないという思いから、「人生の100のリスト」を作ります。

今の僕に必要なのはそんな具体的なシナリオだと思った。やりたくない事はわかっていたが、やりたい事はあまりにもたくさんあって、方向性というものが全く見えなかった。ならば、それらを一つ一つ書いていって、全てを目標にすればいい。現状を変える事はできないかもしれないが、自分というものが少しは見えてくるかもしれない。

 

著者は、正直なところぶっ飛んでいて最近の安定志向が根強い若者達の価値観とは真逆のような生き方をしています。仕事もお金も無くてもなんとかなるだろう、という考えのもと、実際にギャンブルだけで妻と2人で1年間生活された経験もあるそう。(著者の書いた人生のリストの一つにも「ギャンブルでメシを食う」というものがあります。)

 

本当の自由とは何か

わたし自身がもっとも興味深かったのは、誰から見ても自由な生き方をしているように見える著者ですが、22歳で結婚して、大学を卒業し東南アジアを彷徨い、バリ島で1年間過ごした後に、毎日毎日自己嫌悪と不安に苛まれるようになり、その後5年間も原因不明のノイローゼ状態になってしまったことです。

 

オーストラリアのシドニーで出会ったプライマル・セラピーによって、ノイローゼの原因がわかるまでの様子が「セラピーを受ける」の章にとても臨場感あふれる表現で記されています。著者は、自由な生き方をしていると見えて、実は父親との確執の中で不自由になっていたのです。

 

著者が高校を卒業後、放浪の旅を始めたこと、日本に留まることを避けていること、その行動の元になっていたのは「父親との確執」にあったのだという事がわかり、なんだか府に落ちた思いがして、急にロバート・ハリスさん自身を身近な存在に感じました。そして、著者自身も恐らく、自分の心に父への怒りのような感情があるということに気付いていなかった。もしかすると心の何処かでは気付いていたのかもしれないが、向き合っていなかったのかもしれません。

 

トラウマは悪なのか

とはいえ、放浪人としての生き方は、著者のパーソナリティとなって、その後の「自伝を書く」や「ラジオの番組をもつ」といった仕事にも十分に活かされていて、過去のトラウマが悪い結果を生んだとはとても思えません。そして何よりはたから見た著者の人生は、破天荒ではありますがキラキラと輝いていて毎日がとても楽しそうなのです。今ここを生きていてそこで出会った人を大切にしている著者の人柄があってからこそのことだろうと思いました。

 

そして、19歳の時に初めて書いた100のリストを再び書き直したこれからの人生の100のリストについてもまたどこかでお目にかかれると良いなと思いました。

 

人生の100のリスト

人生の100のリスト

 

 

今週のお題「読書の秋」

『嫌われる勇気』岸見一郎 古賀史健

こんにちは。あごきれウサギのみもらです。

 

2013年発行のベストセラー本、同名のドラマも作られて世の中に知れ渡りましたね。遅ればせながら読みました。アドラー心理学の内容が哲人と青年の対話を通して解説されています。正直言って1回読んだだけで、この本が真に伝えたいことが理解できたとは思えない、それだけ重量感のある本でした。

 

人は変わることができるのか。

「人は変わることができるのか。」というテーマについて、アドラー心理学に精通した哲人と人生に悩みを抱えた「変わりたい」と願う青年が全くの反対意見を交わし合うところから始まりとても読み応えがあります。

 

哲人は、現在の自分は過去の出来事によって規定されるのだという考えを

われわれは原因の住人で有る限り一歩も前に進めない

 

と、完全否定しています。

そして、変えられないのではなく

自らに対して変わらないという決心を下している 

 

のだと断言します。自分を好きになれないのも「自分を好きにならないでおこうと決心している」からだと。

 

なぜ、そのような決心をする必要があるのか。それは

他者との関係の中で傷つかないため

 

こんな自分は誰にも好きになってもらえないだろうと思い、他者と距離を置くことで対人関係の中で傷つくことを避けている 

 

のだと言います。

 

すべての悩みは「対人関係の悩み」である

本書では、すべての悩みは「対人関係」によるものだと断言しているところが興味深いです。

 

確かに言われてみると、社会人になって初めて悩んだ事は対人関係のストレスでした。大学生までは、苦手な人物がいても関わらないという選択ができたのですが、社会人になると仕事の上司だったりどうしても関わらざるをえない関係が生まれる。思い起こすと、当時(10年前)私は上司からのパワーハラスメントとも取られるような言動にとても悩んでいました。そして、上司のことが心の底から嫌いでした。

 

人生のタスク

「人生のタスク」から逃げているから、他者と競争し、他者を敵とみなすことに繋がっている。

 

 人生のタスクというテーマが登場します。私が入社した頃、アドラー心理学を学んでいればもう少し気持ち的にはゆとりができて、余計な言葉は耳に入らなかったかもしれません。

 

アドラー心理学では、人生のタスクが3つあります。

1.仕事のタスク:仕事上の対人関係の形成と維持

2.交友のタスク:友人関係の形成と維持

3.愛のタスク:恋愛関係と親子関係の形成と維持

 

そして、行動面と心理面で目標を掲げています。

自立すること
社会と調和して暮らせること

それをこの行動を支える心理面の目標は、
私には能力がある、という意識
人々はわたしの仲間である、という意識
です。

 

幸福とは何か

本書における幸福感とは「わたしは誰かの役に立っているという主観的な感覚」すなわち「貢献感」をさします。

わたしの周りでも、仕事のやりがいについて話すとき口を揃えて皆

「お客様に感謝された時がいちばん嬉しい。」

と言いますが、これはコモンセンスなのでしょうか。

 

自由とは何か

「自由とは他者から嫌われる事である」

ここで、出てきました。タイトルにもなっている「嫌われる」という言葉。

 

他者の評価を気にかけず、他者から嫌われることを怖れず、承認されないかもしれないというコストを支払わないかぎり、自分の生き方を貫く事はできない。つまり、自由になれない。

 

幼少期から他人の目を気にしながら生きてきた身としては、真の意味で「自由である」という状態になる事は容易ではなさそうに感じます。

 

生きる意味とは何か

アドラー「一般的な人生の意味はない」と言っています。

本書では、人生において大きな目標を掲げる必要はないと述べています。その理由として、

人生とは連続する刹那なのです。われわれは「いま、ここ」しか生きることができない。われわれの生とは刹那の中にしか存在しないのです。 

 

したがって、

計画的な人生など、それが必要か不必要かという以前に、不可能なのです。

 

そして、哲人と青年の会話がクライマックスを迎えます。それまで、反論を繰り返してきた青年が翻る瞬間の会話です。

 

哲人:人生における最大の嘘とは「いま、ここ」を生きないことです。過去を見て、未来を見て、人生全体に薄ぼんやりとした光を当てて、何か見えたつもりになることです。あなたはこれまで、「いま、ここ」に目を背け、ありもしない過去と未来ばかりに光を当ててこられた。自分の人生に、かけがえのない刹那に嘘をついてこられた。

青年:・・・・ああ! 

 

かなり読み応えのある深い本でした。また人生のどこかの折に読み返したい本です。

 

 

嫌われる勇気―――自己啓発の源流「アドラー」の教え

嫌われる勇気―――自己啓発の源流「アドラー」の教え

 

 

今週のお題「読書の秋」

 

『生命の暗号 あなたの遺伝子が目覚める時』村上和雄

こんにちは。あごきれウサギのみもらです。

 

少し古い本ですが、遺伝子の可能性を示唆されるとても興味深い本でした。

 

タイトルからは少しとっつき憎い印象を受けましたが、読んでみると内容は至ってわかりやすく、遺伝子の知識がほとんどゼロの私でも大変読みやすかったです。

 

 遺伝子の構造と原理は、全ての生物に共通

著者の論じられている内容で特に興味深かったのは、次のような内容です。

 

驚異的なのは、遺伝子の構造と原理は、全ての生物に共通していることです。現在、地球上には二百万種以上の生物がいると言われていますが、カビも大腸菌も植物も動物も人間も同じ原理。ということは、あらゆる生物が同じ起源を持つことも示唆しているように思われます。

 

カビも人間も同じ起源・・・。そう考えると、生きとし生けるもの全てが愛おしく思えてきます。とはいえ、カビ菌と一緒はちょっと嫌ですがね。

 

遺伝子のON・OFF

そして、どうして人間がカビ菌にならないのか(カビ菌はちょっと極端かも)、髪の毛が爪にならないのか(これならまだわかる)というと、爪になるための遺伝子をOFFにしているからだとか。人間の全体でONになっている遺伝子はわずか10%ほど。良い遺伝子をONにすることで、これまでなかった力が発揮出来るというのです。

 

そんなお話を聞くと、どうしてもドラゴンボールの世界を感じてしまいます。ドラゴンボールの悟空もクリリンが死んだショックとフリーザへの怒りから突然眠っていた遺伝子がONになりスーパーサイヤ人に進化したのでしょうか。ドラゴンボールの話はフィクションなので、置いておいて・・

 

では、どうしたら遺伝子をONにできるのか。そこには、「プラス発想」が良い働きをするそうです。著者は、プラス発想が良い理由を、「エントロピーの法則」を通してわかりやすく解説してくれています。

 

物質世界では一般的に秩序のあるものは、秩序のないものへと向かう方向性がある(中略)これを、エントロピーの増大といい、物質世界の一般則として認められているものです。

 

例えば、透明な水の中に赤いインクを一滴垂らします。すると、インクの色は拡散しますね。これがエントロピーの増大によるものなのだそう。

 

そして、人間も物質で成り立っているので、エントロピーの法則が当てはまるのです。

人間が生まれた瞬間から、崩壊と死の方へと向かうのは、秩序のない方向へ踏み出すような遺伝子が体の中に存在しているとしか考えられない。

 

プラス発想で遺伝子は活性化する? 

そのため、人間はどうにかしてエントロピーを減少させなければいけない。そこで重要な役割が遺伝子とそれによって作り出される酵素、それから「プラス発想」です。

 

「プラス発想」によって遺伝子はエントロピーを減少させようと頑張ってくれるのだとか。特に辛い経験をした時も、プラスの面をなんとかみつけて「よい方へ展開する」という風に広い視野でとらえて行こうということを、遺伝子の観点から教えてくれる本です。

 

神のような存在はあるのか

そして本書は全体を通して人間が生きているという奇跡を教えてくれました。

人間の約60兆個の細胞の一つ一つに遺伝子が書き込まれていること。そして、それらの細胞が一つ一つ役割を持って必要な機能をONにして心臓や皮膚や爪などを作り出していること。人類がカビ菌と違って精巧な生き物に進化したこと、それは本当に奇跡であること。著者(科学者)の視点からも、何か神のような存在(Something Great)があるとしか思えないこと。

 

人間がこの世に誕生したという奇跡を感謝して、今ここに自分が生きているという現実にも感謝して、これからの子供達にこの遺伝子をつなげていきたいと心から思うことができました。

 

そして、プラス思考は遺伝子レベルで見た時でも重要な役割を果たすのですね。

 

〔文庫〕生命の暗号 (サンマーク文庫)

〔文庫〕生命の暗号 (サンマーク文庫)

 

 

今週のお題「読書の秋」